ストレスにやさしい生薬のいろいろ|漢方のはなし

5.ストレスから気滞(きたい)が起きる

気(き)」は情報伝達物質である

中医学では人間の身体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)(水分・潤い)などで、構成されていると考えています。この中の気(き)とは内蔵や組織・器官の働きを活発にして生命活動を支えるエネルギーであり、情報を伝え身体全体のバランスを整える情報伝達物質でもあります。

エネルギーとしての気(き)は、それぞれの内蔵の生理機能を行う上での活動源となります。例えば心気(しんき)は心臓を拍動させて血液を全身に送る。脾気(ひき)は消化吸収を行う。肺気(はいき)は呼吸を行うエネルギー源となります。 

伝達物質としての気(き)は主に肝臓によってコントロールされていて肝気(かんき)と呼ばれています。

ストレスが加わると肝(かん)の気(き)の流れが悪くなり「気滞(きたい)」という状態が発生します。気滞(きたい)ではイライラする・胸やわき腹あたりが張ったような感じがする・おなかが張りガスやゲップが多い・頭が張ったように痛むなどの症状が現れます。私たちが気持ちを落ち着けるときに深呼吸をしたり、いやな事がある時、思わずため息をつくのは、ストレスによって発生した気の滞(きのとどこお)りを解除しようという本能的な反応なのです。

肝(かん)」の働きに気(き)をコントロール

肝気(かんき)が停滞すると、更に心臓・胃腸・肺などの機能をコントロールすることができなくなるので、動悸・息切れ・過呼吸・食欲不振・下痢・手が震えて思うように活動できないなどの症状が現れるようになります。このような症状は心臓や胃腸などが悪いわけではありませんので、検査をしてもこれといった原因が見つからず、自律神経失調症などと診断されることもあります。このような場合、中医学ではこれらの症状を引き起こした根本的な原因である気滞(きたい)を改善する「理気薬(りきやく)」あるいは「疎肝薬(そかんやく)」と呼ばれる漢方薬で、肝気(かんき)の流れをスムーズにするようにします。

気滞(きたい)が更に激しくなると、今度はいっきに爆発し、これに伴い血液も上昇しますので、のぼせ・頭痛・目や顔が赤いなどの症状が現れます。このような状態を「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と言い、上がってしまった熱い気(き)(陽気(ようき))を鎮める「潜陽薬(せんようやく)」もあわせて使用します。

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