女性を美しくする生薬のいろいろ|漢方のはなし

3.芍薬(しゃくやく)

芍薬(しゃくやく)は白と赤の2種類があります。

芍薬(しゃくやく)はふっくらとやさしいシャク約(しゃくやく)を意味しています。中国には風姿シャク約(ふうししゃくやく)という言葉があります。顔つきや姿が美しくしなやかで、この花の色香、姿をなまめかしい美女にたとえた表現で、一般には「芍薬美人」ともいいます。また灼耀の意味もあり、輝くような美しさを表しています。

芍薬(しゃくやく)はむかしから中国の人々にも日本の人々にも親しまれてきました。中国の春秋戦国時代に屈源が著した『詩経』という最古の詩集にも男女の別れに再会を約して送られる植物としてその名が見られ、「二人の男女が仲良くなって互いに芍薬(しゃくやく)を贈りあい」ました。日本でも芍薬を顔佳草(かおよぐさ)といい、六妍(ろっけん)(芍薬、芙蓉(ふよう)、海棠(かいどう)、木槿(むくげ)、梨花(りか)、長春(ちょうしゅん)の六種類、きれいな花を意味する)の一員に数えあげています。「立てば芍薬・・・」のたとえももあり、各地で焼くよう、または観賞用として栽培されています。薬用に使うのは根の部分です。

芍薬は白芍(びゃくしゃく)と赤芍(せきしゃく)の2種類に分けられます。

白芍薬(びゃくしゃくやく)はボタン科の植物シャクヤクの根で、皮をむいて乾燥させたものです。白芍薬(びゃくしゃくやく)は血に栄養を与える働きがあり、月経困難、生理不順、おりもの、立ちくらみに使われています。また主成分のペオニフロリンは鎮痛、鎮静、抗痙攣の作用があり、生理痛、腹痛、胃痛、頭痛、こむら返り、手足の痙攣による疼痛に佳く働きます。当帰(とうき)、川キュウ(せんきゅう)、地黄(じおう)、阿膠(あきょう)(ロバからとったにかわ・コラーゲン)などと一緒に配合された当帰養血膏(とうきようけつこう)は、中国の女性に大変人気があります。白芍(びゃくしゃく)を中心とする薬は他に婦人薬としてよく使われる四物湯(しもつとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などがあります。

芍薬は「血(けつ」の熱をとるお薬です。地の調整と貯蔵は「肝(かん)」が行っています。

中医学では、血の調整と貯蔵は「肝(かん)」が行うと考えています。「肝血(かんけつ)」がよく流れると、生理が順調にきて、顔もつやつやし、爪も輝き、お肌もつるつるします。芍薬(しゃくやく)は肝機能の回復を促進しますので慢性肝炎、肝障害にもよく使われています。

血が不足気味の人は「虚熱(きょねつ)」(からだの水分などが不足して起こる発熱)が出やすく、のぼせ、寝汗をかく、落ち着きがなく、寝つきは悪く、めまい、頭痛、耳鳴りなどの症状がよく見られます。現代医学的には、ホルモンバランスのくずれ、更年期障害、交感神経の興奮、精神の緊張、高血圧と所見され、芍薬(しゃくやく)は効果的です。

一方、赤芍薬(せきしゃくやく)はボタン科シャクヤクの根をそのまま乾燥させたものです。

赤芍薬(せきしゃくやく)には二つの特徴があります。まず、血に入る熱を冷まし、顔の赤らみ、目の充血、紅皮症、発疹などを改善します。次に、血の巡りをよくし、ドロドロとした血の塊であるオ血(おけつ)を取り除き、オ血(おけつ)による腹痛、生理痛、月経困難、みぞおちの痛み、肩こり、打撲傷、できものなどによく効きます。赤芍薬(せきしゃくやく)はペオニフロリン、ペオノール、ペオニン、タンニンなどを含んでおり、心臓の冠状動脈に流れる血液の量を増加させます。

現代人の生活は非常に豊になり、おいしいものをたくさん食べて体の中に熱がたまりやすくなっています。そのため、血圧が上がって、顔も目も充血しがちです。しかも、運動不足、ストレスなどが加わって、血液はドロドロと粘りけが増して、流れにくくなり、狭心症、動脈硬化が大変多くなっています。これらの疾病・症状に赤芍薬(せきしゃくやく)は効果を発揮してくれます。

特徴と効能
●血に栄養を与え、肝機能の回復も促進。お肌もツルツル
●鎮痛・鎮静・抗痙攣
●ホルモンバランスを整える
●血に入る熱を冷まし赤から顔、目の充血などに効果的
●お血(おけつ)を取り除き血の流れをよくする

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