貧血｜女性のための漢方
漢方医学
漢方では貧血のことを「血虚」（ケッキョ）と呼んでいます。簡単にいうならば、血の不足した状態です。
特徴的な症状としては、顔の色つやが悪く皮膚が乾燥している、生理不順、髪のつやがなく抜けやすい、動悸、めまい、爪が薄くてもろいなどです。
漢方では主に補血薬といって、身体の造血機能を高め身体の血を増やすような処方を用います。
特に補血効果の高い生薬として、当帰があります。当帰は身体を温め造血機能を高める効果があるので、冷え性や貧血を改善する漢方薬にはよく用いられています。
また、漢方では貧血は脾胃（胃腸消化器系の臓器）の働きが弱ることでも起こると考えています。脾胃の働きは食べ物の消化と、消化した栄養を全身に運ぶ機能です。
胃腸の機能を高め消化吸収をよくする漢方を服用することで、造血作用を高め、血を補うような機能を回復します。
体質に適した漢方を服用してみると実感できるのですが、貧血だけでなくそれまで抱えていたさまざまな症状も改善することがあります。
貧血でお悩みの方はぜひ一度、漢方による治療を試してみてください。
西洋医学
貧血は女性に多く見られる病気です。
女性には生理があるので、貧血になりやすいのはある程度はやむをえないことです。
また、不正出血や胃の出血、ダイエットなども貧血の原因になります。
貧血は血液中の赤血球や血色素が足りなくなる状態です。赤血球は全身に栄養を運んでいるので、貧血になると全身に十分な栄養が行き渡らなくなります。
その結果、疲れやすい、内臓の機能の低下、皮膚が乾燥し湿疹などの皮膚病、生理異常、動悸やめまい、立ちくらみ、精神的なアンバランスなどの状態をまねいてしまいます。
さらに、不妊症や流産しやすい身体になることもあるので、安易に考えずにしっかりと治療をしておきたいものです。
貧血はその原因によっていくつかに分類されます。
鉄分の欠乏による鉄欠乏性貧血、赤血球の寿命が病的に短くなる溶血性貧血、骨髄の造血力が低下する再生不良性貧血などですが、一般的な貧血というのは鉄欠乏性貧血のことをいいます。
また、病院の検査ではヘモグロビンの値が正常値であっても、貧血のような症状を訴える方も多くみられます。これは「仮性貧血」と呼ばれているもので、潜在的にかなり多くみられます。
西洋医学では鉄剤が用いられますが、貧血の方には胃腸の弱い方も多く、胃腸障害を起こすことが多いようです。
日常生活
鉄欠乏性貧血の改善には、鉄分の豊富な食品を摂る必要があります。
レバー、マグロ、牛肉の赤身、カキ、ほうれん草、ひじき、大豆製品などを毎日摂るようにしてください。
また、こうした食品とビタミンCを多く含んだ食品を一緒に食べることで、鉄分の吸収を高めることができます。
イモ類やかんきつ類、イチゴやキウイなどはビタミンCが多く含まれています。合わせて食べるとよいでしょう。
貧血の漢方の実例
貧血、便秘の漢方薬を使った症例
長身でやせ型の女性です。貧血がひどく冷え症、疲れやすい、めまい、生理不順、さらには便秘もひどいとのことです。
主な症状としては生理が50日～60日周期で、朝晩に手足がむくみます。
便通は5～7日に１回で、下剤を使わないと便秘します。
生理周期が長く、むくみも顕著に見られたのでこれらの症状に適した漢方薬を、また漢方の便秘薬もいっしょに処方しました。
一ヵ月後には便通が１～２日に1回はつくようになり、疲れやすさやめまいなどの貧血症状も改善が見られてきました。。
また、服用をはじめてからじょじょに体が温まり、手足もむくまなくなったとのことなので、このまま同じ処方を続けました。
服用をはじめて３～４ヶ月目には生理周期が35～40日くらいになり、便通もほぼ毎日つくようになりました。
疲れやすさや立ちくらみなど、貧血の症状も大分よくなっているとのことです。
貧血、生理不順の症例
やせ型で顔色の青白い、貧血、冷え性の方です。血圧が低く最高血圧も８０程度しかないとのことです。
さらに生理は１年に３～４回しかなく、来店時も３ヶ月以上生理が止まったままとのことです。
貧血がひどくめまい、立ちくらみがあります。小便が近く１日１０回以上トイレへ行くのですが、１回の量は少なくすっきりしません。夕方になると足がむくみます。
数ヶ月前から職場でのストレスが多くなり、胃のもたれ、胃痛、吐き気があります。便秘、手足も冷たいとのことです。
貧血、冷え性、生理不順、むくみなどを目標に、漢方薬を処方しました。下剤を飲むと腹痛、下痢をすることが多いとのことでしたので、作用の穏やかな漢方の便秘薬も併用することにしました。
２ヶ月を服用したころには、貧血の症状はよくなり、むくみ、冷えの症状もだいぶ減ってきました。便通も２日に１回になりました。