更年期のおはなし|漢方のはなし

6.デリケートな肌の乾燥と痒み

冬は肌が乾燥しやすい季節です。保湿性の高い乳液やクリームに変えてもなかなか改善されず、痒みさえ感じるケースが少なくありません。なかでも、更年期にさしかかっている女性の場合は外陰部や膣の乾燥感や痒みを苦にする方が多く見られます。西洋医学的では女性ホルモンの減少によるものと考えられ、性ホルモンの補充療法をすすめますが、一方では乳がんを発症させる恐れがあるため、敬遠されがちです。多くの場合、ただ痒み止めを塗るだけで我慢するしかありません。

このような症状の方に中国漢方の考え方をご紹介します。中国漢方では性ホルモンと関係の深い五臓六腑は肝(かん)と腎(じん)が中心です。肝と腎は西洋医学の肝臓、腎臓とは少し考えが異なります。中国漢方の基本原則のひとつに「腎は生殖を主る、女子は肝を本(もと)とする」という考え方があります。

腎の働きを補う薬は補腎薬(ほじんやく)といい、性ホルモンの減少を止め、分泌を促進し、身体のホルモンバランスを整えます。 長い歴史と経験の中から生まれた主な薬として六味地黄丸とその仲間の杞菊地黄丸、八仙長寿丸、瀉火補腎丸などがよく用いられます。すなわち漢方によるホルモン補充療法ともいえる薬です。

また、肝の働きを補う薬は補血養肝薬(ほけつようかんやく)といい、皮膚の弾力を甦らせ、保水力を高めて乾燥を阻止するとともに、皮膚の過敏性を減らすために、潤いのある肌となります。 薬としては、阿膠(あきょう)や当帰(とうき)の入った婦宝当帰膠や何首烏が大変有効です。

すなわち、補腎薬、補肝薬を活用することは体の内側から皮膚を丈夫にして、肌の乾燥や痒みを治すことができる内服美容法でもあるのです。

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